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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

と、こわごわ首をさし伸ばしている。

「誰じゃい」

と、不承不承な喜平の返辞がやっと聞えた。

コトンと、六尺棒を突く音がして、てらりとした薬鑵頭が出てくると、

「おう、喜平だな」

と、妙に人なつこく、外の影が寄ってきた。

「なんだ、てめえは……」

門番の喜平おやじ、六尺棒を中に隔てて、わざと、近寄りがたい構えをする。

そういわれると、対手は急に、穴へでも入りたそうにうつむいた。酒菰をかぶっているので人相はわからないが、とにかく、乞食であることは、一目で分る。

「――物乞いじゃないか、てめえは、ふざけた奴だ、顔を貸せの、喜平だのと」

「すまなかった、実は……」

「なにが実はだ、この野郎、少し抜作とみえるわえ、さあさあ向う河岸へ渡んな、向う河岸へ」

きたない物でも退けるように、六尺棒の先で小突くと、そいつをつかんで、唐突に、

「おいッ、お、おれは、森啓之助だよ……」

と顔を寄せた。

あッけにとられて、

「ヘエ……?」と、いったまま喜平おやじ、しばらく対手を見つめていたが、なるほど、森啓之助にちがいはない。

「どうなさいましたえ? ……森様」

「面目ない。実に、きまりが悪い」