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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

鵯の声がする、百舌鳥が高く啼いている。ハラハラハラハラ扇形の葉が降りしきっている。

寺は峠路の口にあった。

先に来ていれば、たいがいこの辺にいるはずと思ったが、見当らないので、周馬は山門の石段の下に腰を下ろし、しばらく、秋の陽ざしに温まっている。

柿色の投頭巾に、銀杏の葉が三ツ四ツ溜った。

「おや、飴売り」

「人形使いの飴屋さん」

そこいらへ栗拾いに来た子供たちが、知己を見つけたように周馬のまわりへ寄ってきた。

じろじろとかれの姿を見て、何か物いいたそうであったが、首をあげた周馬の目のおそろしさに驚いて、無邪気な少童少女は、散るともなく、顔を見あって、こそこそ村のほうへ帰ってしまう。

その後は、絵のような秋の木洩れ陽の中を、ひとりの尼が通ってゆく。

一刻ばかりの間の変化はこれだけであった。

だが、周馬は退屈しなかった。

待つという空な時間を、こんな愉悦にみちて、恍惚と過ごすなんていうことは、一生のうちにそうめったにはない。どっち道、楽園の扉は開いて、おれはそこへ、迎え入れられるばかりになっているのだ。少しは、待つのもよかろうではないか。

そう考えて落ちついていると――。