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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁

青空文庫

交換手なのですが、先方へ線を繋ぐ時、声が漏れて来るのを耳にしますと、お嬢さんが友達を誘って遊びに行く打合せをしたりするのを、田舎者だものですから、大胆なことかのように来て話すのでした。

兄の家では、役所との関係もありますので、大分早く引かれましたが、先方からかかって来れば格別、あんまりお使いにはならなかったようでした。万年筆がお嫌いだったように、新しいものはあまりお好きではないのです。そういう点ではかえって母の方が進んでいて、「そちらに電話がないと不便だから引いておもらいなさい。私が病気になった時に、早く知らせたいと思うから」などといわれました。

兄は電話での応対なども下手でした。電話へ出ると、平常と違った切口上になるのでした。兄は数学というものが不得手なので、電話番号が覚えにくいらしく、何かの字を当てて覚えようとなさいます。譬えば親戚や自宅の電話番号なども、六七四というのを空(むなし)と覚えるという風で、自宅の二五七九を、「太藺(ふとい)と七子(ななこ)だ。織物二つで覚えいいだろう」などといわれましたが、余人にはそれもむつかしいというので、後には「藤色七子」