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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁

青空文庫

今の京北中学です。尤も電車が通じたのと店が出来たのと、どちらが先だったか覚えません。

米峰氏はそこは店だけで、店から見える位近い曙町に住居を作られました。四方が道になって高い塀で囲まれたお家です。ラジオで放送される声はよく聞きましたが、御話はしませんでした。或夏の朝明方、坂の下に立っていますと、米峰氏が来られました。「どちらへ」とお互いに申しまして、「池の端まで」といいましたら、「私も」といわれます。上野不忍池で催す蓮の会へ案内を受けたのです。会主の大賀一郎氏は縁つづきになるのでした。米峰氏もそこへ行かれるので、御一緒に駕籠町で乗り換えて東照宮下で降りました。何の御話をしたかよく覚えませんが、三宅雪嶺氏御夫婦のお話をなすったようです。何でも金婚式についての事で、「あなたは」とお聞きになりますから、「もうすみました」と申しましたら、「やあ」と仰しゃいました。雪嶺夫人の花圃さんは私の学校の御出身です。池の蓮は真盛で、朝風が心地よく吹き渡って、会場には最早大勢の人が集まっていました。乗って漕ぎ廻らせるために、小舟が繋いでありました。戦後の食糧事情のため、池の大部分は水田に代えられて、昔の面影はありません。