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あだこ

あだこ

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《あだこ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,762 字 · 46 頁

青空文庫

小さい声で、津軽訛りの唄を無心にうたいながら、風呂の焚き口をみたり、いそいで煮物のかげんをみに走ったりした。――食事の支度が殆んどできたとき、半三郎が帰って来た。変ったようすもなく、風呂にはいり、食事をした。あだこは手まめにあと片づけをし、風呂にはいり、それから、いつものとおり縫い物をひろげた。

そこは半三郎の居間であるが、火をべつに使うのはむだだからといって、初めからあだこはそこへ縫い物を持って来た。いま考えると、自分もこころぼそかったし、彼の退屈をまぎらしてやるつもりもあったのだろう。その夜も針を動かしはじめると、やわらかな声で、国のことを話しだした。半三郎は机の前に坐り、片手で火桶のふちを撫でながら、半刻ばかり黙って聞いていたが、話のきれめで、静かに眼をあげながら云った。

「さっき曽我のところへいって来た」

あだこの針を持つ手が動かなくなった。

「曽我十兵衛、あだこは知っている筈だ」

あだこの頭が少しずつさがった。

「これまでは知らないと云っていたが、あだこは知っている、そうだろう」

「はい」とあだこは口の中で答えた。

「正直に話してごらん」と彼は云った、「十兵衛とはどんなかかわりがあるんだ」