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いしがおごる

いしが奢る

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《いしが奢る(いしがおごる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,304 字 · 45 頁

青空文庫

六

犠牲者は出さないように、というのが、藩主はじめ江戸重職の意向であった。

「――なんだ」

仲田千之助の声でふと見ると、庭さきに下僕の一人が花を持って立っていた。

「唯今これを届けてまいりましたので」

白いみごとな芙蓉の花であった。千之助が立っていって受取った。

「すぐ帰りましたが、若いきれいな娘でございました」

「わかっている」千之助は戻って来て、保馬の机の上にそれを置いた、「――来いとのたよりでございますな」

保馬は黙ってその花に見いった。

六

それ以来、きちんと一日おきに、花が届いた。もちろんいしからであろう、大輪の菊のこともあるし、芒や女郎花や葛など、野山の花のこともあった。手紙もことづけもなく、花だけを届けてよこすのだが、そのほうがいしの気持をよく伝えるようで、保馬の心に深くしみいった。

保馬は半月ちかく出る暇がなかった、そのあいだに準備もほぼととのい、江戸から知らせのあるのを待つばかりになった。正式の勘定吟味役が江戸から来るのである、むろん初めからの予定であるが、それが宮津へ着くまえに、保馬が商人たちと会談することになっていた。つまり財政改革の下拵らえで、必要なばあいには準備した調書をかれらに示し、拒否できないように抑えるという計画だった。