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それから
それから
線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁
背景に船と檣と帆を大きく描いて、その余った所に、際立って花やかな空の雲と、蒼黒い水の色をあらわした前に、裸体の労働者が四五人いた。代助はこれ等の男性の、山の如くに怒らした筋肉の張り具合や、彼等の肩から脊へかけて、肉塊と肉塊が落ち合って、その間に渦の様な谷を作っている模様を見て、其所にしばらく肉の力の快感を認めたが、やがて、画帖を開けたまま、眼を放して耳を立てた。すると勝手の方で婆さんの声がした。それから牛乳配達が空罎を鳴らして急ぎ足に出て行った。宅のうちが静かなので、鋭どい代助の聴神経には善く応えた。
代助はぼんやり壁を見詰めていた。門野をもう一返呼んで、三千代が又くる時間を、云い置いて行ったかどうか尋ねようと思ったが、あまり愚だから憚かった。そればかりではない、人の細君が訪ねて来るのを、それ程待ち受ける趣意がないと考えた。又それ程待ち受ける位なら、此方から何時でも行って話をすべきであると考えた。この矛盾の両面を双対に見た時、代助は急に自己の没論理に耻じざるを得なかった。彼の腰は半ば椅子を離れた。けれども彼はこの没論理の根底に横わる色々の因数を自分で善く承知していた。