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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

不思議な事に、そうなると、自己の翻訳とは違って、いつもの通り非常に熱心になった。代助は現今の文学者の公けにする創作のうちにも、寺尾の翻訳と同じ意味のものが沢山あるだろうと考えて、寺尾の矛盾を可笑しく思った。けれども面倒だから、口へは出さなかった。

寺尾の御蔭で代助はその日とうとう平岡へ行きはぐれてしまった。

晩食の時、丸善から小包が届いた。箸を措いて開けて見ると、余程前に外国へ注文した二三の新刊書であった。代助はそれを腋の下に抱え込んで、書斎へ帰った。一冊ずつ順々に取り上げて、暗いながら二三頁、捲る様に眼を通したが何処も彼の注意を惹く様な所はなかった。最後の一冊に至っては、その名前さえ既に忘れていた。何れその中読む事にしようと云う考で、一所に纏めたまま、立って、本棚の上に重ねて置いた。縁側から外を窺うと、奇麗な空が、高い色を失いかけて、隣の梧桐の一際濃く見える上に、薄い月が出ていた。

そこへ門野が大きな洋燈を持って這入って来た。それには絹縮の様に、竪に溝の入った青い笠が掛けてあった。門野はそれを洋卓の上に置いて、又縁側へ出たが、出掛に、

「もう、そろそろ蛍が出る時分ですな」