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それから
それから
線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁
従って文学談は単に二三の人名と書名に終って、少しも発展しなかった。
梅子は固より初から断えず口を動かしていた。その努力の重なるものは、無論自分の前にいる令嬢の遠慮と沈黙を打ち崩すにあった。令嬢は礼義上から云っても、梅子の間断なき質問に応じない訳に行かなかった。けれども積極的に自分から梅子の心を動かそうと力めた形迹は殆んどなかった。ただ物を云うときに、少し首を横に曲げる癖があった。それすら代助には媚を売るとは解釈出来なかった。
令嬢は京都で教育を受けた。音楽は、始めは琴を習ったが、後にはピヤノに易えた。ヴァイオリンも少し稽古したが、この方は手の使い方がむずかしいので、まあ遣らないと同じである。芝居は滅多に行った事がなかった。
「先達ての歌舞伎座は如何でした」と梅子が聞いた時、令嬢は何とも答えなかった。代助にはそれが劇を解しないと云うより、劇を軽蔑している様に取れた。それだのに、梅子はつづけて、同じ問題に就いて、甲の役者はどうだの、乙の役者は何だのと評し出した。代助は又嫂が論理を踏み外したと思った。仕方がないから、横合から、
「芝居は御嫌いでも、小説は御読みになるでしょう」