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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ

たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】

佐藤 春夫

線上閱讀佐藤 春夫《たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】(『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,182 字 · 48 頁

青空文庫

わたしはこの男に今まで知らなかった新らしい天分を一つ発見しました。というのは、この男は一面では原稿を人に売り込むことがなかなかうまいらしいのです。彼の書いたものの特色はそうすぐ誰にでも理解できるものではなかったのに、彼の原稿が売れたのは彼に別方面の特別な才があったらしいのです。彼がどことなく愛嬌があり、しかも割合に品がよく、又一見して才気煥発――「あの科学と哲学とを見!」と思われたからかも知れません。彼はそんなことで得た金があると酒ばかりのんでいました。それから時々、ひどく感傷的になると、それに負けまいとするらしく彼は極端にニヒリステックになりました。

彼は時々わたしにいろいろな忠告をしました。例えば、いやしくもH・Sともあるものが銀座を歩く時には山高帽をかぶるべきである、などの種類の忠言であります。また彼は、文章を書くなどは馬鹿馬鹿しい話だから、そんなことはやめて寄席の芸人になるのだといい出しました。尤もその寄席というのはきっと、例のフラグメントとして覚えて来たパリあたりの見世物か何かから暗示を得たらしいのです。で彼の空想はといいますと、自らコメットXと名告ってその小屋で彼独得の小咄を三つ四つして、最後に彼の作った歌詞と歌曲とをギタアで発表するというのである。