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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
線上閱讀渡辺 温《アンドロギュノスの裔(アンドロギュノスのちすじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,168 字 · 267 頁
』
『そうです、併し……』
その時、刑事はふと葛飾が膝の上で両手を揉み合しているのを眺めた。
『おや、あなたは右手に指輪を嵌めていられますか?――紫水晶のようですね。始終そうして嵌めていられますか?』
『ええ――』
『ちょっと検べさせて下さい。』
刑事は葛飾の指輪を持って扉の外へ出て行った。十五分経って帰って来た。そして峻烈な口調でこう云ったのである。
『いい加減に白状してしまったらどうです。この指輪の石には血がついている。被害者の顎にのこっていた傷は、卓子に打ちつけたためではなくて、実はあなたに一撃された痕なのだ……』
葛飾は遂に絶望の叫びをあげた。
勿論、指輪に血がついていたなどと云うのは刑事のトリックなのだ。だが、葛飾は容易くそれに乗せられたわけである。
6
法廷に於て葛飾は有罪と決定した。
彼は併しあくまで犯行を否定した。
『当夜、私は非常に亢奮して家を飛び出ましたが、街へは行かずに近所の沼の辺や林の中を夜風に吹かれながら矢鱈に歩き廻っていました。そして可なり長いことそうやっている中に漸く落ち着きを取り戻して来て、それに段々寒気が辛くなったりするので、家の方へ引っ帰しました。