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ドナウげんりゅうこう
ドナウ源流行
斎藤 茂吉
線上閱讀斎藤 茂吉《ドナウ源流行(ドナウげんりゅうこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,565 字 · 44 頁
それから葡萄酒をやめて、Goldochsen-Bier という銘の麦酒を飲んだ。これは通人の飲むものでは無かろうが、微かに植物の花のような香がして僕には気に入った。僕の味覚は、ここのウルムの住民ぐらいのものであった。
物理学者の Einstein もこの町に生れた。それからこのごろ、日本と関係ふかかった Siebold(1796-1866)の妹さんが、郊外に住んでいることを知ったので、上さんに一寸当って見たが、上さんはまた怪訝な顔をしたかとおもうと、亭主を呼んで来た。亭主もまた怪訝な顔をしたのは極く自然であった。僕は稍滑稽を感じ、勘定をすませてそこを出た。
僕は心の抑制から脱して、伽藍の壁の日時計の残っているのを見ていた。時計の真中に黄金の光が炎のように画いてあって、そこに針の影がうつるのである。この伽藍は、十三世紀から始まって十六世紀頃までに出来た、ゴシック風の大伽藍である。なるほど雀が藁を啄んでとまっている。これが Ulmer-Spatz に相違ない。いろいろな細工と尖りが雑然として居って、僕には何だか煩わしい。旅人である上は、そういうものをも見免しては済まぬような気持が、意識の奥の方で動いているが、疲れと煩わしさとがそれを否定している。