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ドナウげんりゅうこう
ドナウ源流行
斎藤 茂吉
線上閱讀斎藤 茂吉《ドナウ源流行(ドナウげんりゅうこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,565 字 · 44 頁
九
けれども、この細くなって西北の方に消えている川が、写真に撮れるだろうかどうかなどと思っていると、下手の方から自転車でのぼって来た二人の村人が行過ぎしなに、「キナ人かな」などと問答するこえが聞こえた。僕は午食をした食店を出てから、一度も独逸語を使わなかった。ただ水際を歩いて、時々日本語でひとり言を言ったのみであった。そこから僕は、今度はその道に拠って、ドナウエシンゲンへどんどん引返した。時間は殆ど目分量で極めていて不安心だから、時には駆歩をした。
あるところに来ると家が二軒あって、そこで鶏が黄いろい家鴨の雛を育てているところがあった。家鴨の雛が無遠慮でいるのに鶏がしきりに気にしてるところも僕の目についた。そのうち二たび両岸の高いところの川べりに来た。古い家に向日葵のような花を黄に大きく画いたのがあった。宿に著くと時がまだ少しあった。僕は顔を洗い勘定をすましそれから麦酒を一杯飲んだ。
九
汽車は午後四時二十分に此処を発した。日は未だそう傾いてはいない。汽車のなかで僕は幽かに婬欲のきざすのを感じた。僕は虫目金を出して地図で川の源の方へ辿って行った。川は森と森の間の平地を縫うて、Vilingen の町に著く、そこまではあのように銀いろをした静寂な川に違いない。