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ボニンとうものがたり
ボニン島物語
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《ボニン島物語(ボニンとうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,772 字 · 41 頁
「そうしているところを見ると、なるほど立派な顔だ。船持ちだけの貫禄がちゃんと具わっている」
「お戯れで、恐れいります」
「大湊の湊屋は、南部藩の上納金でひき潰されたという噂も聞いている……清兵衛さん、覚悟の上の渡外だったのだろうな」
駒三郎がいった。
「そちらが、さっぱりと肚を割ってくれれば、こっちにもうち開けたいことがある……ほんとうのことを聞かせてもらいたい。吹きっさらしの海端で、ひょんな話をしかけるようだが、どのみち、宿の泊りで話せるようなことではない。もう、大体、察しているのだろうが、じつのところは、大湊の町へ入らぬうちに、埓をあけたい気もあるのだ」
清兵衛は、「申しあげましょうとも」と胸を張ってこたえた。
深志はうなずいて、
「やはり、そうだったか。いや、そうあるほうが当然だ。大湊の藤代長右衛門は、叔父か甥になるひとだそうだが、船もろとも遠国へ持って行って、舟子一人、帰してよこさぬような悪い政事では、誰にしも、勘弁なりかねるから」
「いや、そのせいというのじゃない。天保四年の飢饉は、北郡に当りがひどくて、ごらんのような有様になり、百姓も漁師原も、息をつきかねて他領へ逃げだすので、北郡だけで、空家が八千軒にもなったと申します。