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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《三郎爺(さぶろうじい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 頁
これにはさすがの女房も驚かないではいられない。大きな声で呼び立てたので、近所合壁の者が皆出て来る。出て来ては、皆度胆を抜かれる。
まるで、茹(ゆだ)ったか酔っぱらったようなお月様が、小半時、始めの処から一分一厘動かないのだから、なるほど、只事ではない。
天地が、また火の玉に戻る前兆だの、凶作のお知らせだのと、ワヤワヤ大騒動をしていると、やがて一人の子供が突き抜けそうな声で、
「あれ! 見ろよ、あら! あら! 山からもう一つお月様あおできなすった」
と怒鳴った。
見ると、ほんとに、朱色のお月様の後の山際から、淡金色のすがすがしいもう一つのお月様が、夕暮の空に後光を燦(きら)めかせながら、しずしずとお出なさる……。
ところが、いやはや、何とも痛み入ったことには今が今まで、松の梢に悠然と構えて下司共の大評定も知らぬ顔に、夕風をあてていた朱塗のお月様は、その声が聞えると一緒に恐ろしくあわて始めた。
そして気の毒なほど、尖った葉っぱの上で、モジモジしたかと思うと、やがて思いきったように、一つ、クルリともんどりうつや否や、枝から枝へ、葉から葉へと、赤いまま、大きいままのお月様が、あろうことかコロコロコロコロまるで手毬のように転がり落ち出したではないか。