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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
花の香の霞をわくる春風に梢ももるゝ山ざくらかな
春の夜のあけゆくままに山のはの霞の奥ぞ花になりゆく
立ちこめて暮れぬる空に秋霧のたえ間も見えていづる月影
こんな歌なら『玉葉』『風雅』へ入れて置いてもちょっと区別はつきかねると思うのである。多くはないが、こうした自然のとらえ方が意識されてきているのである。頓阿は応安五年八十四歳で大往生をとげた。
さて、こうした自然を天象のうごきから見る見方、というよりは、動きやすい天象が特に印象ぶかい状態にある一瞬をとらえて味わうという態度を、私は和歌的観照の中世における終極として考えている。これはある意味では生活のデカダンである。こうした自然の種々相をとらえて抒情詩をなすということのためには、おそらくは生活を風雅のために挙げて捧げねばならぬのである。文芸に生をささげた世捨人の眼の必要な世界なのである。つまりは和歌成立の地盤が数寄そのものの上に来たことである。文芸をうちこんで作るか、数寄の心をもって嗜むかの問題でなく、数寄の生活の上で、和歌を「詩」にしようとする努力である。だからそれは、和歌人だけのものでなく、当時の京都の文人詩客に通ずる生活情調を土台に生れている。