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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
それは本書を少しも積極的に良くしなかったばかりか、種々の点で悪くしている。その中でも最も根本的な点は、全体としての構想をかなり曖昧にしてしまっている事である。思想表現の点で十分の自由が保証されている今日にあっては、余りにも中庸を得過ぎているに違いない私の構想も、当時思想統制の前衛としての国文学界においては、それが明晰に語られるならば、異端の烙印を蒙るおそれは決して存しないわけではなかった。私は今日この文章を読み直してみて、今少しの明晰さと厳密さとを表現に与える勇気を持ちあわさなかった弱さを思うと共に、当時私が時代精神の圧力に対して抱きつづけた対抗と緊張と恐怖との肉体的感覚や、暗澹たる無力感や、それにもかかわらず働きつづける批評的意識やを思いおこして、自分自身がいとしまれてならないのである。このように些か感傷の痕をとどめた文体は気になる点が多いのだけれども、敢て気のついた誤植をただすほか、一切文章に手を加えないでもとのままに止めた。読者もまた私のそうした愛惜の情を許されるであろう。
ただ一箇所意識して正した所がある。第七節後鳥羽院関係の叙述の終近く、初版には「上皇の風雅であり、遊びであらせられる。