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アラスカのひょうが

中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河(アラスカのひょうが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 122,039 字 · 248 頁

青空文庫

「白鳥湖が見えます」というのである。今少しすると白鳥が群れきて遊ぶというこの湖は、ただ一面の鉛色に静まりかえっていた。そしてその周囲には茶色に枯れたよしが密生していた。渚と名づくべきものが少しも見られない湖は、如何にも人界から離れた感じを与えるものである。そういえば、この湖の姿も色も、全体の調子が生命の世界から遠く離れたものであった。よしの切れ間に白い水が光って、その辺に白骨のようにしゃれた流木が沢山漂っていたことも、この感じを強めるのに役立っていたのであろう。白鳥などという鳥は、巴里の公園の池の中よりも、こういう湖に置いた方が、ずっと綺麗に見えることであろう。あるいは今に白鳥がこなくなって、この湖に白鳥湖という名だけが残った方が、もっとふさわしいかもしれないとも思ってみた。

落合を出てから、名ばかりの駅と、その周囲の淋しい町との外は、人間の手の入った痕がほとんど見られない土地を、汽車はごとごとと走って行った。そして漸くにしてオホーツクの海へ出た。しかしその海も鉄色に暗く、浪だけが白く荒れていた。

敷香へ大分近くなって、知取〔マカロフ〕という町へ着いた頃は、もうすっかり夕暮の景色になっていた。