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はたちのエチュード

二十歳のエチュード

原口 統三

線上閱讀原口 統三《二十歳のエチュード(はたちのエチュード)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 61,578 字 · 125 頁

青空文庫

*189

僕はインスピレイションという言葉の気弱い曖昧な味を、もう口にしようとは思わなかった。僕が、認識のメスを、自らの肉身に刺して血を流す時、僕の自意識の瞳孔は、詩人であった時よりも、ずっと豊かな風景の展望を肆にするのだ。

*190

創作に、生き甲斐を見いだす、あの詩人の一群れを、そのままにしておこう。

「詩人! まっぴらだ」などと威張るまい。

僕はもう、詩人と握手する術を知っている。

*191

「しばらく、君の歩みを止めてふりかえってみたまえ。――君が「見る者」なら、このすばらしい展望をとり逃す法はない」

僕はこんな忠告には耳を藉さずに歩みつづけた。

するとまた、だれかがこう言った。(ジャン・コクトオだったかしら)

「確かに『立ち止まる』のはもう時代遅れだ。それにしても、何てまあ無愛想な恐ろしい顔をしてるんだい。体操だ、ダンスだ、スピードだ! もっと軽快に歩くことを学びたまえ」

僕は相変わらず押し黙っていた。

やつらは、僕を不幸な男だと思ったに違いない。

だが、「天邪鬼め!」などと、己惚れた悪口はよしたまえ。僕は何も故意に君たちに反対したのではない。