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こんにちのぶんがくのてんぼう
今日の文学の展望
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《今日の文学の展望(こんにちのぶんがくのてんぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,109 字 · 83 頁
「夜明け前」の持つ文学上の記念碑的価値は、日本のロマン主義時代の詩人として出発したこの作家が、自然主義の時代に小説の道にうつり、以来、幾星霜、社会生活と思想の波濤を凌いでここに到達した人生態度と文学的様式の、よかれあしかれこの作者としての統一完成の姿である。「夜明け前」は、維新という客観的な歴史を背景としつつ、決して客観的な歴史小説ではない。歴史を下から見たものの人生記録でもない。人生と人間の理想とその実現の努力に対する作者の感慨は主人公半蔵の悲喜と全く共にあり、氏一流の客観描写である如きであって実は克明な一人称である筆致で、郷土地方色をも十分に語った作品である。「夜明け前」の主人公は時代が推移して明治が来るとともに没落せざるを得なかった宿場本陣の主、精神的には本居宣長の思想の破産によって悲劇的終焉を遂げざるを得なかった男である。作者藤村氏が、抒情的な粘着力をもって縷々切々と、この主人公とそれをめぐる一団の人々の情感を語りつつ、時代の力、実利と人間理想とが歴史の波間でいかに猛烈にかみ合い、理想の敗北が箇人的生涯の悲惨として現れるかということを一般人生の姿として冷たく、傍観的に観察している態度等は、この作者がロマンチストとしての抒情性と社会に対する自然主義的立場とを作家的稟質、社会所属の本質、過去の全閲歴