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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁
「唯今も申した通り、是非にお目にかからねば叶わぬ用事ばしあればこそ、供をも連れずに忍んでまいりました。とにもかくにもここ明けて……。頼みます、頼みまする。」
女に似合わぬ根強さに、内でも少し根負けがしたらしい。勝手にしろといわないばかりに、あくびまじりで答えた。
「それほどの用ばしあらば、その門はとざしてない筈じゃ。勝手にあけて通られい。」
「では、ごめんくだされ。」
かれは低い竹の戸を押して、つつましやかに内へはいって来た。ゆう日をよけるために半ばおろしてある古い蒲簾の間から先ずかれの眼に映ったのは、あるじの法師の姿であった。年はもう四十あまりの小づくりな痩法師で、白の着付けに鼠の腰ごろもを無雑作にくるくるとまき付けて、手には小さい蓮の実の珠数を持っていた。庵に住む人だけに、さすがに頭は剃りまろめていたが、それもやがて苛栗というように生え伸びて、頤のあたりには薄ぎたない髭がもじゃもじゃと黒ずんでいた。彼が双ヶ岡の法師と世に謳わるる吉田兼好と知った時に、女も少し意外に感じたらしかったが、そんな色目も見せないで、かれは先ずうやうやしく会釈した。
「安居のお妨げ、何とぞお免しくださりませ。