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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

」

また来たのかと思ったが、先刻の人とは声が違うので、兼好は手を休めて又ふり向くと、うす暗い門に一人の男が立っていた。これも武家の侍らしく、片手に馬の口をとっていた。

「ちと尋ねたいことがござる。武家の姫らしい十七八の……。」

「おお、見えられたよ。」と、兼好はすぐに答えた。「その女子ならば疾うに京へ戻られた。」

「一人で見えられたか。但しはほかに道連れでも……。」

「連れはない。その姫という人が戻られると、やがてあとから若い侍がたずねて来た。」

「若い侍……。」と、侍は俄かに聞き咎めるように言った。「その侍は幾つほどで、どのような身なりでござった。くわしゅう教えてくだされぬか。」

「うす暗いので、年ごろも人相もよくは判らぬ。なんでもこのごろ流行る段だらの染小袖を着ていたらしいが……。」

「段だらの染小袖……。」と、侍は鸚鵡返しに言った。「むむ、やっぱりあやつじゃ。采女じゃな。くどいようじゃが御坊、姫はその若侍と連れ立って見えたのではござらぬか。姫は一人、侍は一人、別々にここをたずねて参ったのでござるか。」

「今も言う通り、別々じゃ。姫はさき、侍はあと、唯それだけのことじゃよ。