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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁
まず雨のやむのを待つがよかろうと、そばから注意する者があるのを、登蓮はあざけり笑って、人の命は雨の晴れ間を待つものではない、その間に聖が死ぬか、自分が死ぬか判ったものではあるまいと言って、降りしきる雨の中を忙がしそうに出て行ったというのである。小坂部も書物を読んで、何か解せないところがあったので、あすをも待たないですぐに其の教えを乞いに行ったという。それは怪しむべきことではない。むしろ尊むべきことであるかも知れないと侍従は思った。かれはその増穂のすすきの意味を家族や侍女どもにも講釈して聞かせて、姫が非凡の才女であることを今更のように説明するとと共に、自分もまた一簾の物識りであることを暗に説き誇った。
小坂部が奥へゆくと、今まで時々物狂わしゅう呶鳴り散らしていた師直の声が急に鎮まった。やがて侍従も奥へ呼ばれた。
秋の夜寒も近づいたとはいいながら、綾の小袖を三枚もかさねて、錦の敷蒲団の上に坐っている四十あまりの大男は、館のあるじの高武蔵守師直であった。さばき髪というほどでもないが、掻きあげない髪の毛のほつれかかるのを煩さがって、彼は蒼黒いひたいに白の練絹の鉢巻をしていた。