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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

」

師直はやはり舌打ちをしているばかりで、外の木枯しに耳を傾けているかのように顔をそむけていた。

「父上。」

「何じゃ。」と、父は煩さそうに見返った。

「塩冶殿に討っ手を向けること、兄上も御同意でござりまするか。」

「あのような馬鹿者は勘当じゃ。」と、師直は唾吐くように言った。「兄なぞはどうでもよい。何事も将軍家のお指図じゃ。」

「そのお指図も父上からお勧め申されたのではござりますまいか。わたくし決して諄うは申しませぬ。何事もお前さまのお心に問うて御覧じませ。」

小癪なことをと言いたそうに、師直は大きい眼を屹と見据えたが、その顔にはさすがに一種の暗い影が宿っていた。小坂部は恐れげもなく又言った。

「塩冶の内室の儀に就きましては、わたくしも及ばずながら父上にお味方申して居りました。それがためにも双ヶ岡までも訪ねました。その心づくしが却って仇となって、弥が上にも父上のお心を狂わせて、罪に罪を重ねさせまするは、なんぼう忍ばれぬ儀でござりまする。先日わたくしに向かって思い切ったと仰せられたは偽りか。思い切ったという口の乾かぬうちに、さらに悪業を増すようなお企ては、あまりの浅ましさに涙がこぼれまする。