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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

こちらが比較的小人数であるだけに、かえって必死の太刀先きが鋭いので、権右衛門はあやうく斬りまくられそうになって、目当ての姫や采女をそっちのけに、この寒い夜に汗を流しながら挑み合っていた。

この同士討ちは、小坂部に取っても思いもよらない幸いであった。かれは采女もささやき合って、闇にまぎれてこの場をぬけて行こうとした。采女の合図で、侍従もそっとそのあとに付いて行った。

「もう館へは帰られぬ。いずこへなりとも……。」と、小坂部は采女にささやいた。

どこをあてとも無しに、三人は京の町を西に取って、七、八町ほども息もつかずに走りつづけた。ここまで来ればもう追い着かれる気づかいもあるまいと、三人は辻に立ってその行きさきを評議した。侍従はともかくも難波津へ逃げ下ろうと言った。采女は伯耆の大山の霊験者のもとへひとまず落ち着こうと言った。その意見がなかなか一致しないので、小坂部も当座の判断に迷っていると、暗い中から声をかける者があった。

「わたくしと一緒においでなされませ。」

「あ。」と、小坂部は思わず叫んだ。それは、かの眇目の男の声に相違なかった。

「さっきも申した通りじゃ。