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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁
中央の出入り口にはやぶれたる簾を垂れたり。下の方もおなじく板羽目。庭前の下のかたに丸太の門口、蠣殻の附きたる垣を結えり。垣のそとには松の大樹ありて、うしろには壇の浦の海近くみゆ。
(浜の女房おしお、さざえの殻の燈台に火をともしつつ独り言。)
おしお やがてもう暮れるというに、姉妹の方々は何をしてござるのやら……。このごろの日和くせで、又降って来たようじゃが……。
(雨すこしく降る。玉虫帰りきたる。)
玉虫 今戻りました。
おしお おお、お帰りなされましたか。あいにく降ってまいったので、さぞお困りでござりましょう。
玉虫 降りみ降らずみはこの頃の習い、さしたる雨でもござりませぬ。(ぬれたる被衣をぬぎて縁に上がる。)いつもいつも留守を頼み、ありがとうござりました。して、妹はまだ戻りませぬか。
おしお まだお帰りにはなりませぬ。
玉虫 このごろは兎角にそわそわしておちつかず、内を外にして出あるいているは、どうしたことであろうかのう。
(眉をひそむれば、おしおは打笑う。)
おしお それも生業じゃ、是非もござりますまい。
玉虫 生業とは……。
おしお え。(口ごもる。)
玉虫 妹がどのような生業をして居りまするぞ。