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げんろくじゅうさんねん

元禄十三年

林 不忘

線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁

青空文庫

「は、ははは、一つ、今夜あたり口説いてみるかな――。」

口のなかでつぶやいて、苦笑している時だった。

明るい色が、控えの間のさかいに動いて、そこに何の屈託もなさそうなお糸の顔があった。

通りすぎるほど通っている鼻すじだった。それが、すこし険のある表情にしているのかもしれなかった。

敷居に、三つ指をついていた。

重い髪を、ゆらりと上げかけて、

「あの、立花様から、お使者の方がお見えになりましてございます。夜中ながら、お役柄の儀につきまして、ちょっとお上に伺いたいことがございますとか――お通し申しましょうか。」

お糸の白い額を見ながら、いったい、取次ぎにこの女を雇ったはずではなかった、と、吉良は思った。

じっとお糸に眼を据えて、無言でうなずいていた。

六

玉虫靱負は、立花出雲守の公用人だった。一間に案内されて、待っていた。

正面のふすまが、左右にひらいて、ふところ手の吉良が、せかせかした足どりではいって来た。

腰元らしい女をひとりしたがえているのを、玉虫は、平伏しながら、上眼づかいに見ていた。

「どうもおそく参上いたしまして――。」

「いや、なに、かまいません。