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いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
線上閱讀正宗 白鳥《入江のほとり(いりえのほとり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,430 字 · 50 頁
他人にはまるで分らない英文を作ったって何にもならんと思うが、お前はあれが他人に通用するとでも思ってるのかい」
そう言った栄一の語勢は鋭かった。弟の愚を憐むよりも罵り嘲るような調子であった。
「………」辰男は黒ずんだ唇を堅く閉じていたが、目には涙が浮んだ。むろん他人に教えるつもりで読んでいるのではないし、他人に見せるために作っているのではないし、正格でないことはつねに承知しているが、全然無価値だとこの兄に極められると、つくづく情なかった。
「さあ、帰ろうか」と言って、栄一は裾の埃を払って、同じ道を下った。墓地近くなって、のろのろ下りてくる弟を待合せて、妹の墓と祖母の墓とへ詣った。目が窪んで息の臭かった妹の死にぎわの醜い姿は、辰男の記憶にはまざまざと刻まれていて、妹というてすぐ思いだしたが、今墓場に立っていると、×子の墓と彫った新しい石碑に対して追慕の感じは起らないで、石の下の棺の中で蛆に喰われている死骸の醜さが胸に浮んだ。
僧侶が投機に凝りだしてからは、寺は雨戸を鎖して空屋のように汚れて、墓場の道は草が生え木の葉の散るにまかせていた。兄弟は朽葉を踏んで墓地を下った。