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とねのしゃくあゆ

利根の尺鮎

佐藤 垢石

線上閱讀佐藤 垢石《利根の尺鮎(とねのしゃくあゆ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,342 字 · 13 頁

青空文庫

そういう性質の流水であるから、東海道の諸川や、栃木、茨城方面の川が、六月一日の解禁日から、もう盛んに友釣りに掛かるというのに、利根川の鮎は早くても七月に入らなければ囮鮎を追わなかった。

もっとも、数十年まれなことであったが、大正十三年には、驚くほど水温が高まって六月十五日から、円石の簗の尻で友釣りに掛かったが、それは例外である。

綾戸の荒瀬を境として下流は七月初旬、上流は七月中旬、後閑を中心とした最上流では、七月下旬を迎えなければ、鮎は友釣りの鈎に掛からぬのを普通とした。だが、いったん囮鮎を追いはじめると、中断することなく、九月上旬まで、忙しいほど釣れ盛った。

五

ところが、人間どもが憎悪すべき、恐怖すべき、とんでもないたくらみを起こした。

大正末年、大川平三郎は金儲けのために、片品川の水を糸之瀬で悉く塞きあげ、森下に発電所を起こし、下流へ一滴の水も落とさない仕事を完成した。と同時に、浅野総一郎は事業欲のために、利根本流の四、五千個の水量を、岩本地先の大堰堤で締めきり、これを五里下流の真壁村へ運び、大発電所をこしらえた。

これで、利根川の鮎の運命はきまった。