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じゅうにしこう

十二支考(下)〔全2冊〕

南方 熊楠

線上閱讀南方 熊楠《十二支考(下)〔全2冊〕(じゅうにしこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 251,906 字 · 495 頁

青空文庫

を行する地たりとあって、差し引き吾人の住む天下が、北洲に勝る事多しとした。これは出世間の宗旨から立てた見解だが、世間法に言い替えても余りに平等ばかりの社会には、奮発とか、立志とか、同情とか、高行とかいう事がなくなり、虫介同様一汎に平凡の者ばかりとなるから、人々ことごとく『楼炭経』にいわゆる自分天禀の福力ない以上は、天変地異その他疾病を始め一切自然に打ち勝ちて、社会をも人間をも持続する見込みが立つまい。さればこそ経文にも自然の米とか、光りで飯を煮る珠とか、七日続けて交歓するの、四辻に赤子を置かば往来の人が指から乳を含ませくれるの、糞小便は大地、死人は鳥が始末してくれるのと、現世界にまるでない設備を条件として、さて北洲ごとき結構極まる社会が立ち行くと説かれた。科学の進歩無窮なれば全く望まれない事でなかろうが、近頃ようやく出で来た無線電話、飛行船、ラジウム、防腐、消毒、光線分析、エッキス光線くらいを、現代の七不思議として誇る(『ネーチュール』九十巻九一頁)ほどでは前途遼遠で、それで以て平等世界を湧出せんとする者は、護摩を以て治国を受け合い、庚申像を縛って駈落者の足留めしたと心得ると五十歩百歩だ。