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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《十二神貝十郎手柄話(オチフルイかいじゅうろうてがらばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 頁

青空文庫

御大老伊井中将直幸様さえ頭の上がらないお方なのですから」

これが道有の返辞であった。

女の行った先が、素晴らしい権臣であることだけは間もなく証明された。町医者であった道有が、その後恐ろしいような出世をしたのであるから。すなわち侍医法眼となり、浜町に二千坪の屋敷を持つようになったのであるから。

お篠がそういうようになって以来、新八郎は楽しまなかった。しかるに間もなく水茶屋の娘でお品という女が、お篠と顔立ちが似ているところから、新八郎の心を引くこととなり、新八郎はお品と睦んだ。がどうだろうそのお品も、二、三日前に松本伊豆守へ、用人の手から引き上げられてしまった。小間使いという名義の下に、どうやら妾にされたようであった。

お篠は派手な性質で、贅沢することが出来るのだったら、自分から進んで貴顕権門の、妾になるような女であった。

しかしお品の方はそうではなかった。こまやかなつつましい情緒を持ち、ささやかな欲望に満足し、愛する男を一本気に愛する。――そう云ったような性質の女であった。

でお篠が自分を見捨てて権門の妾になったという、そういうことを知った時、新八郎は憎悪を感じた。