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こくをみる

古句を観る

柴田 宵曲

線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁

青空文庫

長高き法し見らるゝ競馬かな    草籬

勝負事に熱心な人たちの狂奔する今の競馬ではない、五月十五日に行われる賀茂の競馬の句である。

競馬を見る群集の中に、目立って丈の高い法師がいる。皆の視線は自らそれに集る。見る人たちの側を主とせずに、法師を主にして「見らるゝ」といったのである。競馬そのものを描かないで、見物の中の或人間を中心とするような手段は、写生文家の得意とするところであるが、この句も期せずしてそういう点を捉えている。

この句を読むと、『徒然草』の一節を思い出す。賀茂の競馬を見に行ったら、樗の木に坊主が上って、木の叉のところで見物していた。木につかまりながら眠りこけて、落ちそうになるかと思うと、ハッと目をさましてまた眠り出す。見物がこれを見て嘲る、という話である。その坊主は木の上にいるのだから、別に大きいとも小さいとも書いてない。「長高き」というのはこの句の働きで、実景から得たものかも知れぬが、競馬の群集中に法師を点じたこと、皆がこれを見るというあたり、あるいは『徒然草』から脱化したのではないかという気もする。

卯の花のちるや流れぬ池のさび    従吾