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こくをみる
古句を観る
柴田 宵曲
線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁
あまり大きくない家が並んでいるようなところであろう。裏町ではないかも知れぬが、道幅なども広くない光景が目に浮ぶ。そこにある一連の格子が黒いというのは、固より塗ったものでもなければ、用材の関係でもない。年を経たその住いと共に黒光を生じたので、古い方の感じが主になっているものと思う。従ってこの黒は漆とか、墨とかいうような種類の色彩ではない、もう少し感じの側に属する黒である。
そういう古びた、小さい家並が一斉に門松を立てている。一陽来復の気は自らそこに溢れているが、この句の中心をなすものは全く古びた格子である。最も人目を惹かぬはずのものが、門松を配するに及んでかえって人の目につく。そこに正月があり、俳句らしい世界がある。堂々たる大きな門構でなければ、正月らしく感ぜぬ人たちは、こういう句のめでたさとは竟に没交渉であるかも知れぬ。
万歳に蝶々とまれたびら雪 左次
昔の正月は今ほど寒くはないにしても、本当の蝶が飛出すには少々早過ぎる。この句は雪のひらひらと舞い散る様を、蝶々に見立てたものと思われる。「たびら雪」は雪片の大なるものだから、この見立には適当なわけである。