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こくをみる

古句を観る

柴田 宵曲

線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁

青空文庫

「花に影」となっている本もあるが、牡丹の花に影をうつすとなると、飛石以外の何者かでなければならぬ。それは句の上に現れておらぬから、何の影か想像に困難である。「花のかげ」の方がいいと思う。

さは/\と風の夕日や末若葉    魯九

夕方の景色である。若葉の梢に明るく夕日がさして、爽な風が吹渡る度に、きらきらと光りながら翻る。『武蔵野』にある「林影一時に閃く」とか、「木葉火の如くかがやく」とかいうような盛な感じではない。明るい中にも一脈の陰影と寂しさとを伴った光である。「さは/\」という言葉の現す風は、そう強い性質のものとも思われぬ。

「若葉吹風さら/\となりながら」という惟然の句は、若葉の風の爽な感じを主としたものであるが、時間は句の上に現れず、眼に訴える分子があまり多くない。魯九の句は「夕日」の一語があるため、斜陽の光の中に翻る若葉の梢が、直に眼に浮ぶように感ぜられる。夕日の若葉などというものは、いずれかといえば洋画的風景で、当時としては新しい世界を窺ったと見るべきであろう。

明るいとか、光とかいう文字を使わないのは、昔の句の含蓄ある所以であるが、今の人はこれでは満足しないかも知れない。