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こくをみる
古句を観る
柴田 宵曲
線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁
但「雲高き」という言葉は、必ずしも高く飛ぶ場合には限らぬかも知れない。野分のあとが何時の間にか晴渡って、澄んだ空高く雲が浮んでいるものとも解される。飛ぶにしても、浮ぶにしても、その雲が入日の朱を帯びていることは慥である。
「野分の跡の入日」だけでは格別のこともないが、「雲高き」の一語を点じたため、濶然たる秋の夕空が直に眼に浮んで来るような気がする。
化兼る狐とびゆく野分かな 一空
一疋の狐が何者かに化けるつもりで、先刻からいろいろ工夫しているが、未熟なせいか、あまり風が強過ぎるせいか、とうとううまく化けられないで、野分の中を向うへ飛んで行った、というようなところであろうか。句には現れていないが、夕方らしい情景である。
日本の文学にはしばしば未熟の狐とか、化損いの狐とかいうものが出て来る。妖気を伴うべき狐魅談に愛敬を生じ、滑稽が生れるのは全くこういう未熟な、化損いの徒が介在するためである。この野分の中で化けかねた先生なども、狐のために気を吐くに足らぬにせよ、文学的材料としては一顧の価値がある。
狐は蕪村に至って大に独得の趣味が発揮された観があるが、この句はその先蹤と見るべきものである。