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こくをみる

古句を観る

柴田 宵曲

線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁

青空文庫

詩の独自の境地はこの辺にも存する。

御明の消て夜寒や轡むし    里東

轡虫は秋鳴く虫の中でも最も景気のいい、哀感に乏しいもののような気がするが、この句は妙にうら寂しい情景を持出した。

神前か、仏前か、今まで上げてあった御明がふっと消えて、あたりは暗くなった。と同時に俄に夜寒を感ずる、轡虫が鳴いている、というのである。

御明が消えて、俄に夜寒を感ずる、という風に限定して解釈しないでも、寂然たる夜寒の屋内に、今までついていた一点の灯が消えた、と見てもいいのであるが、この句の表現には或動きがあるので、その動きに基いて前のように説いたのである。いずれにしても句の世界に大した変りがあるわけではない。

轡虫の声も最初のうちは四隣を悩ますだけの威力を具えているが、秋が深くなるにつれて、かすれたような声に変って来る。この轡虫もいささか声の衰えた場合、従って夜寒も身に入む頃と解していいかも知れない。

捻上て友待顔や雁の首    諷竹

「友待顔」という言葉から考えると、この雁は一羽のように見える。首を捻上げるようにして友を待つという以上、これは飛んでいる雁ではない。水の上か、田圃か、何かの上に下りているらしい。