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こくをみる

古句を観る

柴田 宵曲

線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁

青空文庫

という言葉も、この場合に用いるものとしては強きに失する。ふわりと宙に浮ぶような煙の状態は、「二階からたばこの煙」という無造作な表現によって、かえってよく現し得るのかも知れない。

夜寒哉煮売の鍋の火のきほひ    含粘

煮売屋の鍋の下を焚き立てる火が、旺に赤々と燃えている。鍋の内のものは食欲を刺激するような匂をさせることであろうが、作者はその句にも、ぐつぐつ煮える鍋の音にも、格別感覚を働かしていない。赤々と燃え盛る火そのものに興味を集中しており、それが夜寒の感を強からしむる結果になっている。

「夜寒哉」という風な言葉を上五字に置く句法は、俳句において非常に珍しいというほどでもないが、下五字に置いたのよりは遥に例が少い。それだけ用いにくいということにもなるが、詠歎的な気持は下五字を「かな」で結ぶよりも強く現れるような気がする。この句は「火のきほひ」の一語によって、上の「夜寒哉」を引緊めているようである。

朝顔や皆実になして引たぐる    玄梅

大輪朝顔か何かの貴重な種類であれば、自ら咲かせる花を制限して、多く実などを結ばせぬようにするのであろうが、これはそんな面倒なものではない。