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うもんとりものちょう

右門捕物帖(四)

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《右門捕物帖(四)(うもんとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,105 字 · 337 頁

青空文庫

右門捕物帖

1

その第三十二番てがらです。

ザアッ――と、刷毛ではいたようなにわか雨でした。空も川も一面がしぶきにけむって、そのしぶきが波をうちながら、はやてのように空から空へ走っていくのです。

まことに涼味万斛、墨田の夏の夕だち、八町走りの走り雨というと、江戸八景に数えられた名物の一つでした。とにかく、その豪快さというものはあまり類がない。砂村から葛飾野の空へかけて、ザアッ、ザアッ、と早足の雨がうなって通りすぎるのです。

「下りだよう。急いでおくれよう、舟が出るぞう――」

「待った、待った。だいじなお客なんだから、ちょっと待っておくれよ!」

こぎ出そうとしていた船頭を呼びとめて、墨田名代のその通り雨を縫いながら、あわただしく駆けつけたのは二丁の駕籠でした。

場所はずっと川上の松崎渡し。

川のこっちは浅草もはずれの橋場通り、向こうは寺島、隅田とつづく閑静も閑静な雛の里です。

「では、おだいじに……」

「ああ、ご苦労さん。ふたりとも無事に着いたと、おやじさまたちによろしくいっておくれ」

「へえへえ。かしこまりました。奥さま、かさを! かさを! おかさを忘れちゃいけませんよ。