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めいきょくけっていばん

名曲決定盤

野村 あらえびす

線上閱讀野村 あらえびす《名曲決定盤(めいきょくけっていばん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,837 字 · 680 頁

青空文庫

日本を訪ねた時のピアティゴルスキーは、僅かに三十歳を越したばかりの青年であったが、その芸風はフォイアマンよりも遙かに老成して、危なげのない、本格的な演奏ではあったが、強いて欠点らしいものを探し出したなら、なんとなく平坦に過ぎて、個性的なものが稀薄だったかも知れない。増沢健美氏はこれをくせがないと言っていられる。あるいはそうかも知れない。少くともピアティゴルスキーの演奏は、端正で優美ではあったが、フォイアマンにおけるがごとく、聴衆が自分を投げ入れる気にはなれない性質のものであった。冷たいとか、素気ないとか言うのではなく、それはピアティゴルスキーの芸術が、純粋に客観的で、謙遜して言えば、我々の低俗趣味に「お前仕掛け」で話しかけてはくれないのかも知れない。

一歩過ったら、これはジンバリストになるのではないか――ふとそんな気もした。が、いつの間にやら、その平明な演奏が、平押しに興味と興奮を押し進めて、我々の小ざかしき疑念などを追っ払い、最後の傾倒と陶酔とへ引き入れてしまったのである。ピアティゴルスキーは全く不思議な存在であった。

このまま早老さえしなければ、――換言すればホルモンの補給が潤沢であったなら、ピアティゴルスキーは、若き大家たちのうちでも最も大きなものになるであろう。