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うたのたてやましんじゅういっきょく

唄立山心中一曲

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《唄立山心中一曲(うたのたてやましんじゅういっきょく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,835 字 · 61 頁

青空文庫

ンと落ちるように、旅館から、上草履で出たと見えます。……その癖、一生の晴着というので、母さん譲りの裙模様、紋着なんか着ていました。

お話をしますうちに、仔細は追々おわかりになりますが――これが何でさ、双葉屋と言って、土地での、まず一等旅館の女中で、お道さんと言う別嬪、以前で申せば湯女なんだ。

いや、湯女に見惚れていて、肝心の御婦人が後れました。もう一人の方は、山茶花と小菊の花の飛模様のコオトを着て、白地の手拭を吹流しの……妙な拵だと思えば……道理こそ、降りかゝる雪を厭ったも。お前さん、いま結立てと見える高島田の水の滴りそうなのに、対に照った鼈甲の花笄、花櫛――この拵じゃあ、白襟に相違ねえ。お化粧も濃く、紅もさしたが、なぜか顔の色が透き通りそうに血が澄んで、品のいいのが寂しく見えます。華奢な事は、吹つけるほどではなくても、雪を持った向風にゃ、傘も洋傘も持切れますめえ、被りもしないで、湯女と同じ竹の子笠を胸へ取って、襟を伏せて、俯向いて行きます。……袖の下には、お位牌を抱いて葬礼の施主に立ったようで、こう正しく端然とした処は、視る目に、神々しゅうございます。