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うたのたてやましんじゅういっきょく
唄立山心中一曲
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《唄立山心中一曲(うたのたてやましんじゅういっきょく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,835 字 · 61 頁
……別嬪の香がほんのりで、縹緻に打たれて身に沁む工合が、温泉の女神様が世話に砕けて顕れたようでございましたぜ。……(逢いたさに見たさに)何とか唄って、チャンと句切ると、
(あの、鋳掛屋さん。)
と、初音だね。……
視ると、朱塗の盆に、吸子、茶碗を添えて持っている。黒繻子の引掛帯で、浅葱の襟のその様子が何とも言えねえ。
いえ、もう一つ、盆の上に、紙に包んだ蝶々というのが載っていました。……それがために讃めるんじゃあねえけれど、拵えねえで、なまめいたもんでしたぜ。人を喰ったこっちの芳原かぶりなんざ、もの欲しそうで極りが悪くなったくらいで。
(へい、へい、へい、こりゃ奥様、恐入りました。)
とわざとらしくも、茶碗をな、両手で頂かずにゃいられなかった。
姉さんが、初々しい、しおらしい事を、お聞きなせえ、ぽうッとなって、
(まあ、あんな事、私は奉公人なんですよ。)
さ、その奉公人風情が、生意気のようだけれど、唄をもう一つ唄って聞かしてもらえまいか、と言うんじゃありませんかい。お眺が註文にはまった。こんな処でよろしければ、山で樹の数、幾つだって構やあしませんと、……今度は(浮世はなれて奥山ずまい、恋もりん気も忘れていたが、)……で御機嫌を取結ぶと、それよりか、やっぱり、先の(やがて嬉しく溶けて流れて合うのじゃわいな)の方