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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《問はずがたり・吾妻橋 他十六篇(あづまばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 75,586 字 · 159 頁
どこでもいいから車が駐り次第、次の駅で降りて様子を窺い、無事そうならそのまま乗り直すし、悪そうなら船橋まで歩いて京成電車へ乗って帰るがいいと言うものもある。乗って来た道を逆に柏の方へ戻って上野へ出たらばどうだろうと言うものもある。やがてその中の一人が下におろしたズックの袋を背負い直すのを見ると、乗客の大半は臆病風に襲われた兵卒も同様、男も女も仕度を仕直し、車が駐るのをおそしと先を争って駅のプラットフォームへ降りた。
「どこだと思ったら、此処か。」と駅の名を見て地理を知っているものは、すたすた改札口から街道へと出て行くと、案内知らぬ連中はぞろぞろその後へついて行く。
「いつだったか一度来たことがあったようだな。」
「この辺の百姓は人の足元を見やがるんで買いにくい処だ。」
「その時分はお金ばっかりじゃ売ってくれねえから、買出しに来るたんび足袋だの手拭だの持って来てやったもんだ。」
「もう少し行くとたしか中山へ行くバスがある筈だよ。」
こんな話が重い荷を背負って歩いて行く人達の口から聞かれる。
十月初、雲一ツなく晴れわたった小春日和。田圃の稲はもう刈取られて畦道に掛けられ、畠には京菜と大根の葉が毛氈でも敷いたようにひかっている。