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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《問はずがたり・吾妻橋 他十六篇(あづまばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 75,586 字 · 159 頁
橋の下には焼けない釣舟が幾艘となく枯蘆の間に繋がれ、ゆるやかに流れる水を隔てて、向岸には茂った松の木や、こんもりした樹木の立っているのが言い知れず穏に見えた。橋の上にも、堤防の上にも、また水際の砂地にも、生命拾いをした人達がうろうろしている。佐藤は水際まで歩み寄って、またもや頭巾を刎ねのけ荷物をおろし、顔より先に眼を洗ったり、焼焦だらけの洋服の塵を払ったりした後、棒のようになった両足を投出して、どっさりその場に寝転んでしまった。
すると、そのすぐ傍に泥まみれのモンペをはき、風呂敷で頬冠をした若いおかみさんが、頭巾をかぶせた四、五歳の女の子と、大きな風呂敷包とを抱えて蹲踞んでいたが、同じように真赤にした眼をぱちぱちさせながら、
「一寸伺いますが東陽公園の方へは、まだ帰れないでしょうか。」と話をしかけた。
「さア、どうでしょう。まだ燃えてるでしょうからね。おかみさん。あの辺ですか。」
「ええ。わたし平井町です。一ッしょに逃出したんですけど、途中ではぐれてしまったんです。どこへ聞きに行ったら分るんでしょう。」という声も一言毎に涙ぐんでくる。
「とてもこの騒ぎじゃ、今すぐにゃ分らないかも知れませんよ。