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そうせきしとわたし

回想 子規・漱石

高浜 虚子

線上閱讀高浜 虚子《回想 子規・漱石(そうせきしとわたし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,187 字 · 231 頁

青空文庫

居士は間もなく激しい咳嗽と共にそのコップに半分位の血を吐いた。そういう事は一日に数回あった。その度附添婦はその赤いものに充たされたコップを戸外に持って行ってはそれを潔めて帰って来た。時に枕切れなどを汚すことがあるとそれも注意して取りかえたが、それでも例の血なま臭い匂いは常に室内に充ちていた。

この病院の副院長は江馬医学士であった。これは江馬天江翁の令息であって、自然羯南氏から天江翁を通じて特別に依頼でもあったのであろう、常に注意深く居士を見舞っていた。余が初めて医局に同氏を尋ねて病状を聞いた時、氏は眉をひそめて、

「少しも滋養物が摂れぬので一番困ります。」と言った。居士は匙の牛乳をも摂取せぬことが既に幾日か続いているのであった。碧梧桐君の令兄の竹村黄塔君は師範学校の教授をしてこの地に在住してるので朝暮病室に居士を見舞った。

「お前が来ておくれたので安心した。」殆ど居士の生死を一人で背負っていたかのような感があった黄塔君は、重荷を卸したような顔をして余に言った。それから入院費用の事やその他万般に就いて日本新聞社から依頼されていた事を黄塔君はすべて余に一任した。