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そうせきしとわたし
回想 子規・漱石
高浜 虚子
線上閱讀高浜 虚子《回想 子規・漱石(そうせきしとわたし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,187 字 · 231 頁
それは昼間であったか夜であったか忘れたが多分夜であったのであろう。一等客は漱石氏と私との二人きりであった。漱石氏は棚になっている上の寐台に寐ね、私は下の方の寐台に寐た。私はその寐台に這入る前にどちらの寐台に寐る方がえらいのかしらんと考えているうちに、漱石氏は、
「僕は失敬だがこちらに寐ますよ。」と言って棚の方の寐台に上った。そうすると上の方にあるのだからその棚の方の寐台がえらいのかなと思いながら私は下の方の寐台に這い込んだ。上であろうが下であろうがこんな寐台のようなものの中で寐たのは初めてであったので、私はその雪白の布が私の身体を包むのを見るにつけ大に愉快だと思った。そこで下から声をかけて、
「愉快ですねえ。」と言った。漱石氏も上から、
「フフフフ愉快ですねえ。」と答えた。私はまた下から、
「洋行でもしているようですねえ。」と言った。漱石氏はまた上から、
「そうですねえ。」と答えた。二人はよほど得意であったのである。その短い間のことが頭に牢記されているだけで、その他のことは一向記憶に残って居らん。宮島には私はその前にも一、二度行ったことがあるために、かえってその漱石氏と一緒に行った時のことは一向特別に記憶に残って居らん。