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とさのくにばしら

土佐の国柱

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《土佐の国柱(とさのくにばしら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 頁

青空文庫

「岡田伊七郎だな!」

林甚三郎が云うと、

「いや、誰であろうと構わぬ」

勝之助が拳を突出しながら、「……家中一統、追腹を厳重に禁じられた中に、斧兵衛一人はそれを許された、冥途の御供を許されたのが事実とすれば、斧兵衛は追腹をすべきだ」

「しかし生きている。斧兵衛は生きているぞ」

「若し自分で腹が切れぬというなら、我々が手を藉そうではないか」

「それなんだ」

喜兵衛は頷いて云った。「……斧兵衛どののお命を貰うことは予て覚悟していたが、そのために一人でも二人でも犠牲を出すのが厭だった。万策無きときは仕方もないが、なるべくなら、誰にも傷をつけずに処置をしたいと思っていた。……しかしもういい。追腹のお許しが出ている以上、斧兵衛どのは自裁すべきだ。自裁しないなら我々が……」

云いかけて、喜兵衛は口を噤んだ。

池藤小弥太が立ちあがったのである。……今まで茫然と眼前にある若草の芽を摘んでいた彼は、急にひょろひょろと立ちあがって、そのまま向うへ行こうとする。

「池藤、貴公どうするのだ」

喜兵衛が鋭く声をかけた。

「何処へ行くのだ」

「……拙者は、いても仕様がないと思いまして」

「どういう意味で?」