輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

線上閱讀山川 方夫《夏の葬列(なつのそうれつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 頁

青空文庫

振りかえると、彼はニコニコしながら、半身をねじって右手で煙突を指さしていた。

「のぼってみようよ。この煙突に。ね?」

「エントツ?」

だが、山口は本気だった。突飛なその思いつきが、唐突に彼を占拠してしまったみたいに、彼は別人のような子供っぽい一途な顔になって、無邪気に指で合図すると、なんの躊躇もなくするすると巧みに金網を乗り越え、煙突の細い鉄梯子を器用にのぼりはじめた。

「……わあっ、つめたい!」彼は梯子にかけた手に片方ずつ白く息を吐きかけると、首をねじまげてぼくに笑いかけた。「うへえ、高いぞ……」風で彼の黒い上着は巨大なコブのようにふくらみ、つづいて彼はさも痛快そうに叫んだ。……

そのときぼくのかんじたはげしい願望の正体がなにか、それは知らない。

とにかく、マストの上の水夫みたいに、颯爽と愉快そうに煙突にとりついている彼を見たとき、ぼくには凍るような寒さの高空に、冬のきびしく酷烈な風をうけてさらされてみたい激しい衝動が、ふいに胸をタワシでこすられたように湧いてきたのだ。

「よーし。行くぞ」

なにを考える余裕もなかった。ぼくは吸い寄せられるように金網に駆けより、身がるにそれを越えた。