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よるのしんぐんらっぱ
夜の進軍らっぱ
小川 未明
線上閱讀小川 未明《夜の進軍らっぱ(よるのしんぐんらっぱ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 3,733 字 · 8 頁
おじいさんは、いましがたラジオできいた、兵隊さんの歌が耳について、思い出されて、熱い涙が、ほろほろと流れてきました。
ゴウ、ゴウと、音をたて北風が募りはじめました。空を仰げば、月をかすめて、黒い雲が、幾つも連なって、きつねかおおかみの群れが、後から後から駈けていくように、西の方から、東の空に向かって走っていました。そして、東の空の果ては真っ暗になって、星の光すら見えなかったのです。
「また、吹雪になってきた。」と、おじいさんは独り言をして、野原の道を急いでいました。わずかに昼間、人の通った足跡が、雪の面がついているばかりでした。
たちまち、月の光はかげってしまって、風にまじって、雪がちらちらと降り出しておじいさんのえりもとへ入ったのです。
「とうとう困ったことになったぞ。」
まだあちらの村へ着かないうちに、まったく目も口も開けられないような吹雪となってしまいました。おじいさんは、一歩も、この吹雪に向かっては歩けなくなりました。
それでもおじいさんは、ようやくの思いで、村はずれの小さな神社にたどりつきました。そして軒下にちぢこまって、吹雪のやむのを待っていましたが、知らぬ間に疲れが出て、うとうとと眠ってしまったのです。