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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

細い道でしたから、並木の方へ寄って、源太郎とお豊の馬をも避けたように、竜之助の馬をも避けて、通りすがりに旅の人は、ふと笠の中から竜之助を見て、棒のように立ってしまいました。

この時、林の茂みと小土手の間に二人の猟師が身を隠して、何か獲物を覘っているような様子を誰も気がつきませんでした。この一人は誰とも知れず、ギョッとするほど人相の悪い男で、ほかの一人は金蔵であります。

人相の悪い方は、

「金蔵、慄えてるな」

「ナニ、大丈夫だ」

大丈夫だと言ってみたが争われぬ、金蔵は五体がブルブル慄えて物を言うと歯の根が合いません。

「度胸定めに、それ、あっちから旅人が来る、あいつをひとつやっつけてみろ」

人相の悪いのが、ふと木の葉の繁みから街道の遠くを見ると、ただ一人、この小野の榛原を東から歩み来る旅人があります。

「ドレドレ」

「それ、覘いをつけてみろ」

「うむ」

金蔵は鉄砲を取り直して構えてみたが、支え切れないと見えて、小土手へ銃身を置いて、目当と巣口を真直ぐに、向うから来る旅人に向けてみましたが、

「やあ、速い、速い、恐ろしく足の早い奴だよ」

なるほど、向うから来る旅人の足の速力は驚くべきものです。