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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠1(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 頁

青空文庫

馬を静かに歩かせて、

「あのお武家は、えらく武芸がお出来なさるとお陣屋の先生が賞めていました」

「そうでございます、お陣屋へ修行者が参りましても、手に立つ者はなかったと、皆のお方も申しておりました」

「けれども、口を利きなさるのが、なんだかサッパリし過ぎて、そのくせ、いつでも沈んで、なんだか気味の悪いような、逞しいような、妙に気の置けるお方じゃ」

「それも、お家にお子供さんがいらっしゃるし、奥様もおなくなりなすったそうですから、それやこれやの御心配からでござりましょう」

「そんなことかも知れぬ。しかしまあ道中も、あのお方がおいでなさるので安心じゃ。時にあの馬鹿者の金蔵……ああいう執拗い奴もないものだが、あんなのがゆくゆくは胡麻の蠅、追剥、盗人、そんなことに落ちるのだ、心柄とはいえ、気の毒なものだ」

お豊はなんとも言わないで、また後ろをふり返ったが、竜之助の姿はまだ見えない。

「叱ッ――まだまだ」

林の茂みに覘いをつけていた金蔵は、このとき赫としてあわや火蓋を切ろうとしたのを、あわてて、傍に見ていた鍛冶倉が押えたのは、時機まだ早しと見たのであろう。

この日の朝、三輪の里なる植田丹後守は、しきりに胸さわぎがします。